Category Archives: -映画

本当に無駄なお話 ~『インターステラー』を観ての科学考証的壱考察

ずっと気になってた映画、『インターステラー』をやっと観た。
img_main_interstellar

一昨年からずっと気になっていながら忙しくて映画館に足を運べず、その後もdvd借りたりする機会がなくてやっと今日の昼に視聴した。比較的長い映画なので、時間が取れる日を探して、だ。

感想としては、まぁ、面白かった。
ただ、正直言って結構残念だった。

この映画をことのほか楽しみにしていたのは、前評判として科学的背景がとてもしっかりしていて、特に相対性理論を駆使した話というふれこみだったからだ。クリストファーノーラン監督の映画が特段好きという訳ではないが(メメントは結構好きだった)、最近珍しいハードコア系SF映画ということで、例えばグレッグ・イーガン(オーストラリアの超ハードコアSF作家)バリのゴリゴリのSFネタを期待していたのだが、そうではなかった。
確かに、“特異点”とか“事象の地平面”とか、相対性理論で使用される用語が正しく(って素人の当方レベルの判断だが)使用されていたし、映像もなんかそれっぽかった(大質量ブラックホールのエルゴ球の表現とか)。
だけど、愛の力は時空を超えるとかの話がメインテーマになってしまったりとか、重力にかかわる方程式が解けてないのに解けてるふりを40年もしてたりとか、さらに事象の地平面での量子データが得られて(それもモールスで!)すぐに新たな重力方程式ができて重いもん飛ばせるようになるとか、説明なく短絡的過ぎてわけがわからない。
ハリウッド映画特有の「こまけぇところはいいんだよっ!」的なところがやっぱりこの映画にもあって、とても残念だった。

いや決してヒューマンドラマが嫌いなわけでもなんでもない。そもそも、SFってのは、作者が自由に世界観を作りたいがための空想世界なわけで、そこに完全なる整合性がないといけないわけでないということは当方も理解しているつもりだ。
ただ、この映画の前評判が、「科学的背景がとてもしっかりしている」「著名な理論物理学者が科学側面のコンサルタントを全面的に請け負った!」なんていうもんだったからそのあたりものすごい期待してたんだけど、そこにとてもがっかりしただけだ。
ごはんで例えるなら、すごい本格的なインド宮廷料理屋さんって触れ込み聞いて行ってみたら、スパイスたくさん使ってるらしいけど全然それがわからないフツーに美味しいココ壱カレーみたいのが出されていやそれも嫌いじゃないけどなんだかなぁ、、みたいな。
そんな、有名な科学者がバックについた映像なんていわれたら、僕らの世代はもう「COSMOS」とかを連想しちゃうじゃないですか。期待しちゃいますよねぇ。

さっきも挙げた通りいくつか気になる点はあったのだが、特にあれ?って思ったところは、最初に着陸する惑星の話。
大質量ブラックホールを太陽とする惑星で、ブラックホールのあまりの重力のために時間の進み方が遅すぎる、というところ。
この水に満たされた、地球とほぼ同じ大きさ(この惑星の重力が地球の1.3倍っていうセリフがあったので)の惑星の1時間が、地球のなんと7年になるというのだ。 ほんとにそんなことがありうるのか。観てて直感的におかしいだろと思ったんだけど、それをこれから検証しようかな、と。

・・・というわけで、さぁこれからただの暇つぶしのはじまりはじまり。ものっすごいお暇な方、もしよろしければどうぞお付き合いください。

ワームホールを経由して地球外惑星を探しに行った宇宙探検飛行士たちはまずこの、海に満たされた地球よりほんの少しだけ大きい惑星にたどり着く。
Interstellar-Christopher_Nolan-Matthew_McConaughey-Poster-001

この惑星の時間の進み方は極めて遅い。さっきも言ったとおり太陽であるブラックホールがあまりに重くあまりに近いところを回っているため、その強力な重力のせいで、この星の1時間が地球の7年に匹敵すると映画の中で科学者の飛行士が説明し、惑星に向かう前に皆は無駄な時間をすごしてはいけないと気を引き締めるのだ。
アインシュタインが1915年に発表した一般相対性理論によると、重力の強いところでは重力の弱いところに比べて時間が遅く進む。これは本当で実生活にも応用されています。例えば、地表にいる私たちとはるか上空を飛んでいる人工衛星では時間の進み方が違う。地球からの重力が地表の私たちより弱い人工衛星のほうが少しだけ早く時間が進むために、人工衛星に乗せている時計はわざと少しだけ遅く進む設定をしている。
そして、時間がどの程度遅くなるかという計算は、アインシュタインがだしたアインシュタインの重力方程式というもので計算できる。
こんな式です。
grav

当方はこの式の意味がさっぱりわかりません。
でも、これをもっとわかりやすい形にしてくれたシュヴァルツシルトさんっていうドイツ人がいらっしゃいまして、この人の式だとちょっとわかりやすくなる。いわゆるシュヴァルツシルト解っていうんだけど、こんなの。
28-1

これを使って、はたしてそんな太陽系が存在するのか計算してみた。
・・・・・ややこしい途中の式は省きます。こんな感じ。酒とチョコにお手伝いしてもらってちまちま計算しました。
FullSizeRender(1)

で、出たのが、こんなに進む時間が遅くなるためには、この惑星はブラックホールの半径の本当にすれっすれを回っていないといけなくて、それは、ブラックホールの半径の1.00000000029倍が公転半径になる、ってことになりました。
これ、もしブラックホールが私たちの太陽と同じ半径だったとしたら、太陽の表面から20cmのところを回ってる星ってことになります。ありえないね。もう。でも宇宙では何が起こるかわからんのでまだまだ計算します。

このブラックホールの半径の0.00000000029倍が、惑星の半径より大きかったらありえるよね。
ここで念のために補足します。物理で言うところの物体同士の距離というのはお互いの重心からの距離です。なので、2つの物体の距離が2つの物体の大きさよりも小さいというのは、どちらかにめりこんでるということ。だから、物体がふたつとも球であれば、それぞれの半径の足し算以上の距離がないとだめということです。
今から計算しようとするのは、惑星の地表とブラックホールの表面(これが事象の地表面ってやつですが)が本当にすれっすれで回る状況を想定しているわけです。
で、映画の中でこの惑星は重力が1.3倍っていってたので、この惑星が地球と同じように地殻型惑星として(すなわち密度が地球と同じと考えて)ニュートンの方程式から計算するとこの惑星の半径は約7100km。
ということは、さっきの数で割ると、このブラックホールの半径はなんと24兆km。これは約2.5光年です。もちろん私たちの太陽系の半径なんて優に超えてます。そしてこのブラックホールの質量もさっきのシュヴァルツシルト解から計算すると約1.7×10の43乗kg。これはざっくり太陽の10兆倍の重さで、私たちが住む銀河系の全質量より重いです。

私たちの銀河系のようにちゃんとした銀河や星雲の中心には、とてつもなく大きいブラックホールがどうもあるらしいので、とんでもないブラックホールがあってもおかしくないかもだけど、今知られてる限りで一番大きい超大質量ブラックホールが太陽の約180億倍。映画のブラックホールはこれのさらに500倍以上です。

うーん、もうしわけないけど、やっぱり直感あたってたっぽい。ありえないかなぁ。

しかもしかも、この星に降り立った飛行士たちはなんだかんだ惑星でひと悶着あって4時間ほど過ごしてしまう。で、命からがら惑星を脱出した後は、外で待っていた母船にさっくりと戻る。戻ってみると、そこで待ってたクルーが「もう、まちわびたよ・・」なんて二十数年待って白髪混じりの頭になってた。すなわち、この母船はブラックホールからはるか離れた重力の弱いところで待ってたことになってて、その距離を計算してみると、少なくともこの惑星からさらに何十光年も離れてないといけないんだわ(ざっくりなのは、母船のクルーが待ってた年数がざっくりなので)。
すくなくとも彼らの宇宙船は光速の何パーセントとかでは飛べない(地球から土星に行くまで2年かかってる)ので、何十光年なんていう距離を“さっくり”戻ることは不可能。ここもおかしい。

うーん、やっぱり、ありえないなぁ。

グレッグイーガンや昔のアーサーCクラークさんの話だったらこの当たりもう少しちゃんとしてると思うんだけどなぁ。。

残念だなぁ・・・・。

・・・と、ただの重箱の隅突っつきネタでした。

でも、よく考えてみたら、こんな長ったらしいブログを書く動機を与えてくれたのはこの映画なわけで、そういう意味では、なかなか素晴らしい刺激だったのでしょう。これだけでも観た価値があったのかも。

お付き合いくださりありがとうございました(って付き合ってくれた人いたんだろうか・・・)

手染メ屋
http://www.tezomeya.com/

Leave a Comment

Filed under -映画, -科学, せつめい系