私たちの周りにはたくさんの植物があります。
そして全ての植物は何らかの“色”を持っています。ただその“色”はもちろん人間のために作られているわけではありません。植物自身が生きながらえるため、そして子孫に命をつなぐために作るたくさんの物質の中に、たまたま色の元になる“色素”があるというわけです。そして、その色素を私たちは“草木染め”として普段の染めにいただいています。
残念ながら私たちは「草木の持つ色の全てがすべからく美しい」と思っているわけではありません。草木であれば必ず何らかの色を持っているわけですが、その色が人間にとって“良き色目”であるかどうかはまた別の話であるからです。とはいえ、草木の中でたまたまできた色素の配合が、ハッとするくらい美しい色であることはよくあります。そしてその“良き色目”“美しい色”を昔からとてもたくさんの染め師さんたちが探し続けて下さっています。

だから、tezomeyaでは先人の努力の賜物で選ばれた草や木、そしてたまに動物からいただいた色を普段の染めに使っています。
茜（あかね）、檳榔子（びんろうじ）、藍（あい）、五倍子（ごばいし）、矢車附子（やしゃぶし）、柘榴（ざくろ）、楊梅（やまもも）・・・。全て伝統的に使われ続けてきた草木です。
古代から連綿と伝承されてきた植物からナチュラルな色を引きだし、そのまま服にうつしています。

自然の色に溶け込む草木染めの色を、服を通して皆様に楽しんでいただきたいと考えています。

草木の色は染めつける素材の種類によってその発色が大きく違ってきます。
特に、元々染まり着きの悪いコットンは、どのような状態のコットン素材を選ぶかによって、色の濃淡、そして色の定着具合が変わってしまいます。
染まり着きの良い生機（きばた）状態のコットンは一般的に市場には出回っていませんが、tezomeyaでは染まりやすいコットンを探して、生機（きばた）状態でのコットン素材を手に入れ、そのまま何もせずに服にして最後に染める、という段取りに落ち着きました。そのためにほぼすべての素材を、オーガニックコットンを軸として糸を選ぶところからスタートし、オリジナルで作っています。
どうせオリジナルで生地をつくるなら、草木のフクザツで優しい色目とシンクロしてくれるような素材がほしくなるものです。

そこで素朴だけど存在感のある風合いと生地感を求めて、機屋（はたや、織りをして下さる工場）さんやニッター（編み地を作って下さる工場）さんと直接交渉することにしました。作り手さんたちの大きな心とお力を得ながら現在はほとんどすべての生地をオリジナルで製作しています。
また通常の生地に施される、精練や漂白などの工程を全く通っていない生機（きばた）は草木染めとの相性が良く風合いも良いのですが、縫製が難しく高い技術が必要です。普通であれば嫌がられる生機（きばた）での服作りに、パタンナーさんや縫製現場に無理をお願いしてご協力いただいております。
染色の段階に入るまでに、たくさんの方のお力をお借りしてtezomeyaの服はやっと出来上がります。

草と木が持つフクザツで優しい色目が無理なく自然に調和しているナチュラルな服―
「気に入って手にしてみたら、草木染めだった」
と思っていただけるような服作りを目指しています。

草木染めの特徴ともいえる“褪色（たいしょく）”・・・
「色が褪せるのも草木染めの味わい」だとおっしゃってくださる心優しいお客様に囲まれておりますが、できれば自然の色を長く楽しんでいただきたいものです。
とはいえ、品質の高い色落ち難さを実現した化学染料の使用が普通になった便利な現代、草木による染色は、どのように工夫をしても品質面ではなかなか太刀打ちできません。
できるだけ強く色が入り、そして落ちにくくするための創意工夫は工房始まって以来の最重要課題のひとつであり、その意識は日々継続中ですが、現代の化学染料に比べて早く色変わりしてしまうことはどうしても避けられません。

そこで、tezomeyaが工房スタート時から掲げているアフターサービスが「無料染め重ねサービス」。
tezomeyaアイテムの色が変わったり褪せたりしてお気に入りでなくなったらどうぞ私たちにお預けください。無料で染め重ねをさせて頂きます。
その際、元のお色だけでなく、別のお好きなお色に染めかえることも可能です。
おひとりでも多くの方に草木の色をお手軽に、そして永くお楽しみ頂くためのサービスです。
いつでもお気軽に“染めのおかわり”をどうぞ。

“自然の色を長く着る暮らし”が皆様の日常となりますように・・・