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白のチカラ ~スペインアンダルシア紀行第三回

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月刊で発行されるNDPC(天然染料顔料会議)メルマガに2005年2月~4月まで寄稿した1月のアンダルシア紀行文です。「手染メ屋@アンダルシア」とダブるのも一部ありますが、こちらはちょっと色や染めに関連するトピックを書かせていただきました。三回シリーズ。
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さて、スペインアンダルシア紀行も3回目。そろそろネタも尽きてまいりました(苦笑)。ということでひとまず今号で最後とさせて頂きますが、最後くらいはちゃんと色の話でもしようかな・・。

地中海岸沿いのこの地方に滞在していると、日本とは決定的に違う色がひとつあることに気付きます。それは白。おそらくこれはスペインのアンダルシア地方に限らず、イタリアやギリシャでも、地中海沿岸の町ならだいたいどこでもそうなのかも知れませんが、「白」の白さが日本とは全く趣が異なります。それは、色自体の違いというよりもその主張するチカラが違う、と言うほうが正しいかも。とにかく白が多い。建造物がだいたいどれも白ですし、道や塀、公園の椅子など、いたるところに白が使われています。

皆さん、ちょっと考えてみてください。日本で白い建物と言えば? 病院か公共施設の建物のイメージ位しか出てこないこと無いですか? さすがに昨今はハイカラな建築家さんが多いのでそんなことも無いでしょうけど、それでも日本にいるとあんな白の洪水に合うことはまず無いです(笑)。

地中海に近い土地はどこも石灰質の山が多く、簡単に炭酸カルシウム、すなわち漆喰の原料となる石灰石がいたるところで採れるそうで、毎年正月になると村や町の男が総出で山から石灰をとってきて漆喰にして建物から何から全部白に塗りたくるのが昔からの慣わしだったそうです。さすがに現代ではもうほとんどペンキに取って代わったそうですが、町を白に塗るのは今も昔も同じ。ギリシャでは地中海沿岸の住人は家をたえず綺麗な白で塗っておかないと法で罰せられるとかいう話も聞いたことがあります。

なんでもかんでも白に塗る理由は、強い日差しによって熱がこもるのを防ぐためとかいろいろ言われているようですが、簡単に石灰が取れるからみんな塗りだした、っていうのが一番もっともらしい白塗りの起源説。ここスペインのアンダルシア地方もご多分にもれずどこもかしこも白い町です。で、これだけ白が多いと原色が映えるんですね。だから、町を歩いていても色のコントラストやバランスが全然日本のそれとは違う。田舎に行ってもそうです。村の乾物屋のおばあちゃんが真っ赤なワンピースを着て白塗りの建物の前の椅子に横たわっている、なんてことはザラ。しかも、全然おかしくない。日本だったらさしずめ故オオヤマサコさん並みの派手さ加減だったりするんですけど。そう、全ては白のチカラが日本とは違うからだと思います。

全ての基準色が白になっているヨーロッパ南部。ここが全く日本とは違うんでしょうね。日本の基準色って、白じゃないですよね。そう、生成(きなり)です。皮を剥いだ樹木の幹材の色。すこしベージュな黄色が付いたあの生成が、多分ぼくらにとっての基準色ですよね。

ここからは古代染色研究家の前田雨城氏の受け売りですが、古代から日本では「白」は神聖なもの、神がかり的なものとして扱われていたそうです。白装束、白狐、白馬、白蛇・・。人知を超える何らかの力が加わって作り出される「白」は、僕らの国では決して基準色にはならなかったそうです。もちろん後世になって漆喰なども出てきますが、地中海沿岸のように無尽蔵で得られるものではなく、やはり特別な色だったようです。

そりゃ基準の色が違えば、他の色のバランスも変わってくる。あちらの国と僕らの国で色のセンスや好みが違うのは当たり前。だから、彼らは日本の多彩な色の表現を素晴らしいと言い、僕らは彼らの大胆でストレートでシンプルな原色使いをカッコいいと言う。または、その逆もしかり。色の感じ方の違いは決して目の色から来るのではないんですよ、きっと【^^】。

ついでにもう一つ。アンダルシアの山はさっきの話の通り石灰質なので、ほとんど植物が生えず禿山な状態が多く、これまた日本の山とは全く様相が違います。なんていうのかな、イノチの息吹を感じることができません。山の峠を車で走っていても絶対に「もののけ姫」の雰囲気はでてこない(笑)。そこで、先述の老タクシー運転手フランシスコに聞いてみたんです。「スペインでは、山には神様っていないの?」って。そしたら彼は大笑いしていいました。「そんな、山に神様だぁ? いるわけないじゃろが。山は悪魔だらけよ。神様は海にいるで。いい神様も、悪い神様もな。こんなところに神様がいたら寂しくてかわいそうじゃろ、え?」そりゃそうだ。ホント、ところ変わればなんとやらです・・・

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