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tezomeya日記

東洋亭さん

ウチの工房のご近所、歩いて5分位の所にそれはそれはおいしいレストランさんがあります。

「丸太町東洋亭」

とっても有名なレストランで、京都に住んでらっしゃる人はご存知かもですけど
大正時代創業の洋食レストランでその筋では老舗中の老舗。

東洋亭さんのシェフの娘さんとウチの長男が昨年まで同じクラスの同級生だったってのもあって時々晩ご飯に伺うんですけど、もう、ホント旨い。

一昨日も行ってきたんですけど、デミグラスソースとかもうハンパじゃないです。
オニオンスープも何だかよくわかんないくらいおいしい。
僕ら味オンチな人間でも感動するんだから、そりゃもう、このお店のファンはホント多いようでして、ウチもみならわなきゃな、って思うんですよ。

お食事いただく度に少しずついろんなお話を伺うと、このお店いろいろなこだわりがおありのようでして、材料やら煮込みの時間やらかなりストイックに創業者からのレシピを踏襲してらっしゃるみたいなんですけど、中でもかなり気を使ってらっしゃるのがどうも温度なんじゃないかな、と。
極当り前ですが、出される食器類は全て熱して出てきます。
暖かく食べるビーフシチューやオニオングラタンスープは火が付いたままホーロー食器で出てくる。
で、その時のスプーンは口当たりが冷たくならないようにだと思うんだけど必ず木製スプーン。
ちょうど食べ終わる頃に火が消えるのはまぁたまたまとしても、その火加減がちょうどいい。熱すぎず、です。
ビーフシチューは火が付いたままくるのにタンシチューは熱しただけのお皿に出てくる。
これはタンシチューがあくまでタン主役になってるからみたいです。
サイドディッシュのパンも香ばしくて中がほっかりのいい具合の温め加減。

熱いものは熱く。
温かいものは温かく。

これ当り前なのかもですけど、この当り前のことをソツなくするってとても面倒くさいし、とても高度な技術なんですよね。
しかも、この温度コントロール、東洋亭さんって全部石炭グリルでやってるんですよ。

以前、子供が同級生のよしみで特別に厨房を見学させてもらったんですけど、厨房のグリルが一つの馬鹿でかい鉄製オーブンみたいになってて、その中で石炭が真っ赤に怒ってました。
まずその上に敷いているぶ厚い鉄板(というか鉄の塊)がグリル。
で、中が幾つか部屋別れしててその部位によって温まり方が違って、其れを利用してパンを焼いたりお皿温めたりするらしいです。燃えてる石炭が全ての熱源になってるんです。

石炭の入れ具合はシェフのご主人が全て一人で賄ってて、何ヶ月も超弱火で温めつづけるデミグラスソースのための設定から短時間で一気に焼き上げる料理のための設定まで、熱源である石炭からの距離とその石炭の投入加減によってコントロールするらしいです。

すごい・・・。

この石炭グリル、大正時代の物をそのまま使ってらっしゃるらしいです。
ガスコンロを当り前のように使ってる僕は、少し恥かしくなってしまいました。

いや、ご主人が古いものを頑張って使ってるから、にじゃないんです。
ガスコンロより石炭の方が使いやすいから使ってるって、ご主人がごく普通におっしゃるから、です。

神経質に調整しないといけない道具を使うとその使用者の神経がとても敏感になる。
だから、普通は気付かない・もしくは気付いても大したこと無いと思ってしまうような要素をその使用者は常に敏感に感じ取る。
そして、全ての工程でそのような要素を間違いなく察知して的確に処理・対応していく。
そういう要素は沢山ある筈なんです。

そういった、一つ一つは大したこと無いような要素でも、全部無視するか、全部的確に対応するかで、その過程を通って出来上がったアウトプットは明らかに違うものになる。

もちろん、後者のほうが完成度が高いのは当り前です。

丸太町東洋亭さんのお料理はそういうものなんだと思います。

僕ら料理には素人な人間でも「なにこれ!すんごいおいしいっ!」
って思えちゃうくらい完成度の高いものができる。
それは、普通に、ごく普通に、石炭グリルの方が使いよいから、っていえるレベルの
センシビリティをご主人がお持ちだからなのでしょうね。

すげぇ。

年始早々すごい感動しました。タンシチューとオニオングラタンスープに。

とにかくおいしかった。

ウチもがんばろ。

ちなみに、厨房はもうハンパじゃなく暑いです。
スゴイ熱気。
東洋亭さんの厨房に比べればウチの工房なんて天国です。
冗談じゃなくてまぢで。
今まで何度と無くウチの工房の暑さをネタにコラム書きましたけど
もうネタにするのやめよう、って思うくらい(苦笑)。

今年も宜しくお願い致しますm(__)m。

店主@手染メ屋
https://www.tezomeya.com/

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