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人形装束
この仕事をしていると、
Tシャツの染色だけじゃなくて
他にもとても楽しくて興味深いご依頼をいただくことがある。
こないだ染めさせてもらったお仕事もその一つ。
お雛様の人形装束用の生地染め。
新進ながらとっても丁寧で完成度の高い人形制作をされている
人形工房さんからお申し出を戴いた光栄な仕事である。
お内裏様とお雛様のペアの人形に、平安時代のそのままに近い
装束を着せたい、とお考えで、是非天然染料で染めてほしい、
と熱いお言葉を戴きまして、
で、それならば、天皇やその皇后様など超VIPだけに許された
色を染めましょうか、ということで、
深紫(こきいろ)と深緋(こきあけ)に挑戦させてもらったのでありまする。
深紫は紫根っていうムラサキの根を使ってできるだけ濃く、
深緋は茜と紫根でくすんだエンジ系の色を染めるんだけど、
ホントの色を出すなんてことはぺーぺーのボクには土台無理な話で、
昔のレシピのだいたい10分の1程度の手間と量だけ、すなわち
昔の人たちの10%の労力のみで仕事をさせてもらって
色だしさせていただきましたm(__)m。
それでもね、いい色なんだわ、これが。
で、お人形様にしていただいたのが、これ。
これはご依頼主の平安寿峰様の新作発表会に伺って
パシャリしてきたんですけど、個人的に、ちょっと感動モノでした。
自分で言うのもなんだけど、ホント綺麗だよな。
素晴らしい人形にしていただくと、ホント映えます、色って。
いっつも思うんだけど、色って、プロダクトのただの一要素でしかない。
これは当たり前のことで、色のほかにもたくさんの要素が集まってプロダクトができるわけ。
で、優れたプロダクトっていうのは、その要素それぞれの力を
十二分に引き出して見せてるんだよね。多分。
そんなお人形さんでした。色がとっても引き出されていた。
「色が」って表現、ひいきめかな(苦笑)・・。
ちなみに、このお人形さんのモデルは醍醐天皇とその皇后さま。
延喜年間の天皇です。律令格式の集大成である延喜式の制定や
古今和歌集の撰進を命じたやり手な人だったらしい。
菅原道真の追放もこの人でしたけど・・・。
装束や歴史の知識のあまりの少なさに自己嫌悪になりながら
やらせて頂いた仕事だったけど、その分とっても勉強になったし。
勉強させてもらって仕事させてもらって、で、報酬まで
頂いて、しかも素晴らしい完成品を作って頂いて、
こんな楽しい仕事ありません、ほんと。
寿峰さん、本当にありがとうございましたm(__)m。
しかし、昔の人の10%の労力しかやってなくて
そこそこいい色が出るんだったら、昔の人がやった通りに
染めたらどんな色になるんだろ。
いや、労力の問題だけぢゃないし、
まだまだボクには無理ですけど・・・・。
やっぱすごいんだわ、古代の染色って。
店主@手染メ屋
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