tezomeya ブログ
最上紅花にぞっこんフォーリンラブ
去る(ってだいぶ去るが)7月19日と20日、山形紅花ツアーに行ってきました。
いい天気の山形県白鷹町へ。
気持ちよかったぁ。
今思い出してもホントにフィールアットイーズでおもひでぽろぽろなツアーでした。
企画してよかったです。定員割れもしなかったし。
19日はまずは今回最大のイベントである紅花農家の今野正明さんの畑へ。
・・・と、細かく説明しようかなと思ったのですが、ボクがブログ書くの遅すぎていろいろな方が既にブログに報告していただいておりましてですね、ここでは参加された方のブログへリンクさせていただきますです。
参加された染織作家古舘さんのブログ
一応天然染料の工房をやっていながら、このホンモノの紅餅(べにもち)ってヤツを大量に拝見するのは初めてでして、かなりの感動モノでした。
これがその紅餅。
今、僕たち下っ端の染め屋が普段使っている紅花は中国産の紅花。花弁を乾燥させたものです。これは結構普通に流通してるから。しかも値段も手頃。
しかし、国産の紅花、すなわち山形の紅花(国産の紅花は現在既に山形しかない)は流通量がとっても少ない。
だって、普通の染料屋さんとか漢方薬屋さんとかには全くないんですもの。
山形の紅花を買うためには、山形県が主導で営んでいる「山形紅花生産組合連合会」という処に、毎年3月頃に自分が欲しい紅花の分量を申請して9月のデリバリーを待つ、と言う方法しかない。
どうしてそんなことになっているかと言うと、生産量が格段に少ないから。
以前資料で年間数百キロの産量というのを見たことがあったけど、今回今野さんにうかがったら、もう100kgを切っているらしい・・・。
それを全国の染色家で取り合い。もちろん値段が高いからボクラ弱小染め屋はたくさん買えません。普通に買える中国産のものとは、値段にして最大で20倍程度違う。
ウチは毎年1~2kg位予約して買ってますけど、今のところはそのくらいが精一杯。
あぁ、もっとがんばらなきゃだ。
でもね、なんでそこまでして山形の紅花を少量でも買いたいかというと、色がいいからなんですよ。
同じ量で同じ絹を染めると、普通の中国産と、今野さん達が作ってくださる山形さんとの色の違いは歴然です。
もちろん、山形産の方が冴えるピンク系になります。
ちなみに、このピンクを何度も染め重ねて、韓紅(からくれない)なんていう真っ赤な色を染め付けるんですね。
まだボクは恥ずかしながら韓紅を染め出したことがないですが・・・。
いずれにせよ、クオリティが全く違うので、山形産が高いのは全く当たり前なのですが、
では、この色の濃度が20倍違うのか?それとも中国産で染め出す赤味は、20回染めても山形産1回分に届かないのか、と言うことを言い出すと、これはもうわかりません・・。
色ってそんなに単純なものではないので。
ボクはまだそこまでの限外の染めをしたことがないので、偉そうなことはいえません。
でもね、大多数の染色している人達が(ボクも含めて)中国産ばかり使っているのは、おそらく値段ほどのクオリティの差が中国産と山形産にはないから、と思っているからなのかな、と思うわけでございます・・・。
現在、山形県紅花生産組合連合会が提示している紅花の紅餅の値段は
だいたい33,000円/kgです。
ちなみに、ボクが漢方薬屋さんから買っている紅花(乾燥花弁)の値段は
1680円/kg。
紅餅と乾燥花弁を同等品として比べるのはあまりに紅餅に失礼なのですが、ま、そこはおおめに見ていただいて、だいたい20倍違うわけです。
ところで、この紅花はご存知の通り江戸中期から後期にかけて山形県、すなわち当時の出羽の国(厳密には山形と秋田の一部)の最大特産物だったのです。この時代、最上紅花(もがみこうか)と言えば質量ともに日本一の紅花で、その出荷量は全国の生産量の約半分まで賄っていたとか。「最上千駄」という言葉があるとおり、年間に1,000駄の生産量を誇っていたそうです。
1駄は今の120kg。ということは、この地方の生産量は年間120tだったと言うことですね。
そして、ボクの持っている資料によると、江戸後期の文化年間、この紅餅は山形から京都の紅花商人へ1駄あたり40~70両で取引されていたそうです。
江戸時代、1両は今の貨幣価値で約6~10万円位と換算されるらしいので、
ここから計算してみると、
江戸時代の紅餅は1kgアタリ約3.6万円!
ここでスゴイ問題が生じます。
今、山形の人たちが作ってくれている紅花と、江戸時代の紅花の評価額がほとんどかわらないんですよ! え?全然びっくりしないって? いえいえ、スゴイビックリです。
だって、江戸時代と今ではその生産量が1000倍近く違うんですから!
江戸時代は年間120tも作っていて3.6万円/kg。
今は年間100kg足らずで3.3万円/kg。
通常の資本主義経済であれば、必要なモノの生産量が1000分の1になったら
そのモノの価値はべらぼうに上がるはずです。だってそうしないと需要と供給のバランスがぐちゃぐちゃになっちゃうから。
それが、全然江戸時代から値上りしてないんですよ。この紅花は。
そうです。国産の紅花は全然高くないんです・・・。
今野さん達山形の紅花農家さんが丹精込めて作ってくれた紅餅は全部で100kg足らず。
それに3.3万円かけると、山形県全体での紅餅売上げは
330万円。これが国産の紅花流通金額の総額です。
あまりに悲しい金額です・・・。
今野さん達は当然これだけで食べていけるわけありません。
というよりも、家計の足しにはほとんどなっていないのでは、と思ってしまうような売上げ金額です。
今野さん達は、ほぼ純粋に、国産山形の紅花と紅餅とその文化を途絶えさせないように、ボランティアの気持ちで作ってらっしゃるのではないか、と今回見学して、思ってしまいました。
徳島の藍も瀕死の状態なんて話を聞いて久しいですが、まだなんとか流通経路のようなものが存在するだけ山形の紅花に比べると状況は悪くないのかもしれません。もちろん全然良い状態なんかではないのでしょうけど。
その昔、平安時代の人々は「紅の八塩(くれないのやしお)」なんて言って、紅花を何度も何度も染め重ねた(“八塩”は八回作業をする事でそこから何回も作業をする意)着物をまとってその豪奢な色を楽しんだそうです。これって、たぶん今の大臣クラスの大金持ちさんだけができることだったんでしょうね。
僕らのような一般ピープルには全く無縁のことなのかもしれません。
ホントはボクみたいな庶民が紅花で染める、韓紅を染めてみて見たい、なんてことを思うこと自体いけないことなのかもしれません。
でも、今の時代、大臣クラスの人たちは誰も紅の八塩の色を着てくれようとはしません。
紅花の赤を競って身にまとってくれるお金持ちも多くありません。
・・・ということは、ホントに山形の紅花ってなくなっちゃうのかな・・・。
いや、これは絶対になくしたらダメだな、と。
紅餅から染められる色を見て、そして今野さんや紅花資料館の元館長さんのアツいアツいお話を聞いて思ったわけでございます。
これはね、染色してたり着物が好きだったりしててふとした機会があって山形の紅花の色がスバラシイ事に気付いた人間がなんとかしないと、と思ったわけでございます。
具体的にどうしたらいいかなんて全然わかんないけど、手染メ屋も及ばずながら頑張るつもりでございます。山形の紅花が消えないように。
だって、ホントいい色なんですもの、山形の紅花の赤。
がんばる。
まずは、来年の山形県への申請量を10kgにしようかな。
って、33万円か・・。つらいな・・。
とにかくがんばる。
店主@手染メ屋
https://www.tezomeya.com/