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公開実験教室報告っ! ~柔軟剤をわざわざネタにした意味

ちょっと時間過ぎちゃいましたけど、
先週の水曜日に開催した「手染メ屋の公開実験教室」イベントの報告です。

これまでワークショップのイベントはいくつもやりましたけど、
色の変遷や歴史にスポット当てる内容が多くて、
もちろんそれは大好きなんですけど、

そもそも染色って理科の実験みたいなところがありまして、
「これでこうゆうふうに染めたらどーなるの?」
といった、新しいこと試すときのドキドキ感っていうのも
たまらなく好みでございまして、

そういった空気感を伝えられるワークショップをしたいなという趣旨で始めたこの企画。

第一回は、柔軟剤でコットン素材が濃く染まるかどうか、という実験をしました。

このワークショップは、これまでのイベントよりもちょっと理科っぽい説明が多くなるので、
事前に新兵器を準備。

じゃーん!

って、ただのホワイトボードですけど。

これにいろいろ書いて説明しながら作業を進めました。

とってもとてもはしょって言うと、

A.大豆から作った呉汁
B.豆乳
C.牛乳
D.生卵の白身
E.田中直染料店のタンニン酸液
F.レノア(柔軟剤)

でそれぞれ下処理したオガT用の生地を

・インドアカネ
・ザクロ(鉄媒染)

で染めて、どれが一番濃く染まるか、
っていうことをしたんですよ。

で、今回考えたのが、下処理剤の分量の統一基準。
分量で統一したんじゃなくて、実勢価格でそれぞれの
材料の準備したときの費用を一律にしました。

要は、どの材料が一番安くて濃く染まるか、っていう実験ですね、ハイ。

ちなみに、生地100gに付き20円程度のコストをかけてみました。

みんなでわいわいやりながら作業しました。
こんな感じ。

ご参加いただいた7名の皆様にめいめいお手伝い頂きながら
間に染めのメカニズムなんかを説明しつつ実験。

下処理→先媒染→染色→後媒染→洗濯

までの作業を4時間かけてやりました。

で、結果を見ると
予想通りというか残念ながらというか、レノアがダントツで濃く染まってしまいました。

アカネで染めた結果がこんな感じ。

わかります?生地にマジックで書いてあるアルファベットがさっきの
下処理剤のアルファベットとリンクしてます。
ちなみに、画像の右上のマジック無しは、全く下処理されてない、比較用の生地です。
どの下処理済み素材よりもやはり薄く仕上がってました。よかった。

これね、レノアがよく染まるのにはちゃんと理由があるんです。
実験教室ではもちろん時間作って説明しました。

ブログで説明するにはちょっとややこしいので、ご興味ある方はお店にでも
いらしてお問合せくださいませ。お電話でもいいですよ。

ちなみに、柔軟剤で濃く染まる、っていうのは、草木染めしてる人たちでは
比較的知られていることだと思います。
少なくとも仕事として天然染料に関わっている人には既にご存知のことか、と。

でもね、ほら、柔軟剤で草木染めが濃く染まるってイメージ悪いじゃないですか。
そもそも、そんなことまでして草木染めする意味あるの?って感じ・・・。

だから、草木染めしてる方たちは口に出さないし言わないのだと思います。

なので、実は、実験なんていう風に大上段に振り構えてやって「うわぁ!!大発見っっ!!」っていう内容じゃないんですよ、本当は。

しかも、数ある天然の下処理方法を差し置いてレノアが一番効果的な下処理剤
だったなんて実験結果、なんかミもフタもない寂しい結末ですよね。

それをわざわざ今回手染メ屋がやったのは、陽イオン系物質である柔軟剤やたんぱく質の下処理っていうのが、天然染料をカガクするのに面白いネタだったからです。

天然染料の染めのメカニズムを考えてみると、
カガク的な手法を使えば濃く染めることも出来てしまう、
というちょっと残念な現象の紹介も入れたりして
出来るだけニュートラルに草木染めを説明してみたかったからです。

この“ニュートラル”、っていうのは、いっつも頭からはなさないように
心がけてることです。

何かの現象を判断するときのモノサシって、いろいろあるじゃないですか。

多分、一番重要で最もよりどころとなるのが「好き嫌い」なんだと思う。

でも、この「好き嫌い」のモノサシを社会の中でバランスよく、ありていに言うと
他人様に迷惑をかけることなく使うには、ニュートラルな情報蓄積が絶対重要だと
思うんです。満遍なく、いろいろな方面から、たくさんの情報を、ということ。

で、それを集めて自分で情報の取捨選択をして有効な内容物を取り出して
モノサシの原型を作って、そのモノサシに自分の好き嫌いを色付けして
自分用のモノサシを作る、見たいな感じ?

うまいこと説明できませんが、そんなかんじなんじゃないか、と。

ボクも必要十分な情報収集にはまだまだ程遠い状態ですが、
この“ニュートラル”な感じはいっつも心がけてます。
草木染めの話をするときも、色の話をするときも、環境問題の話をするときも、できるだけ。

どこまで出来てるかは甚だ不安ではございますが、ホント。

・・・というわけで、この「手染メ屋の公開実験教室」は
店主が、まだまだつたない知識量ではございますが、できるだけ
ニュートラルに天然染料の染色を紹介するための場として隔月で
がんばって企画開催していきたいと思っておりますです。

今回は第一回っていう気負いもあって、ボクの独りよがりな
ちょっとツッコミ過ぎの科学ネタなども話しに出してしまい、
ご参加の皆さん少々食傷気味なところもあったようでして、
店主反省すべき点も多々ございましたが、次回は
もっとかみ砕いて話が出来るよう努めて参ります。

皆様、また是非懲りずにお付き合いいただければと思いますm(__)m。

なお、ですので今回の結果も決して“レノア染め”をオススメしているわけでは
ありませんので、念のため(笑)。

次回は「紅花から口紅作ろう」っていう実験です。4月に開催予定。乞うご期待!

店主@手染メ屋
https://www.tezomeya.com/

5件のコメント

  1. 初めまして私は、ガールスカウト埼玉県第24団のリーダーをしています。19日にタマネギの染め物を活動予定です。事前に豆乳のタンパク処理をして、染め物バックを染めることができました。スカウト用のバックをタンパク処理をしようしたのですが、天気に恵まれず仕方がなく違う方法を検索していたところ、レノアがよく染まるとのコメントをみつけました。これ!と飛びつきました。教えて頂きたいのですが、糊をおとしたバックをレノア処理するのですが、レノアを薄めてつけておけばいいのでしょうか?お手数かけますが、教えて頂けるとうれしいです。
    よろしくお願い致します。
                                  浅倉 眞佐子

    1. ご質問ありがとうございます。
      返信がとても遅くなってしまい申し訳ありません・・。
      もう、イベント終了していますね。すみませんです。

      レノアを使用するのであれば、
      ①染めたいアイテムの3倍程度の重さのレノアを、染めたいアイテム50倍程度のぬるま湯で溶かし、そこに染めたいアイテムを30分くらい漬け込んでください。
      ②その後、しっかり絞って乾かしてください。
      ③それを翌日以降に染めてください。
      という段取りでお願いできればと思います。
      ただ、この方法ですと、結構レノアのにおいが残ります。。
      できるだけにおいの残らない柔軟剤がおすすめです。
      どの柔軟剤でお同じような使用量で大丈夫です。

      またわからないことがあればなんでもお問い合わせください。

  2. はじめまして。草木染の濃染処理について調べていたところこちらの記事にたどり着きました。
    非常に興味深く、他の記事も拝読したところ2016年10月18日タイトル「柔軟剤で殺人ができるのか?」を発見し、今回の記事と合わせて疑問が出てきたためコメントさせていただきました。

    Q1.逆性石けん液「オスバンS」(ベンザルコニウム塩化物液)も濃染処理剤となるのでしょうか?
    Q2.もし濃染処理剤となる場合、どのような用法・用量となると思いますか?

    実は、幅37cm×長さ4mの晒木綿を「玉ねぎの皮」や「赤紫蘇」で染色しようと計画しています。(これから玉ねぎの皮を集めるため染色自体は来年の予定です…)
    できるだけ濃い目に染めたいと考えており、豆乳や呉汁以外で確実に染まる方法を探しています。
    また、上記の20/07/31のご回答内容を読むに相当量の柔軟剤が必要そうなので柔軟剤も躊躇してます。(香りが苦手でして…)
    16/10/18の記事を読み、オスバンなら家に常備してるため、今回質問した次第です。

    最終手段として、(株)田中直染料店さんの濃染処理剤「KLC-1」も検討していますので、分かる範囲でご回答頂けると嬉しいです。教えて頂いた情報は趣味の範囲(自己責任)で使用します。

    私、化学は苦手ですので詳細理由をご教示頂いても半分も理解できないと思います。結論だけで十分満足できますので、本業の片手間にお答え頂けると幸甚です。

    どうぞよろしくお願い致します。

    1. ご質問ありがとうございます。
      それではまずご質問二つに関して簡潔にお答えいたします。

      Q1.
      理論的には濃染処理剤になるのだろうと思うのですが、危険なので私は使用しません。
      オスバンSは10%塩化ベンザルコニウムが入っていると思うのですが、私の体重であればオスバンSが400cc程度で推定致死量になると思います。
      ビール缶程度の量で死ねる物質を、少量でも濃染剤に使うのは個人的に非常にためらわれます。

      Q2.
      使用量などはテストしたことが無いのでわかりませんが、そこそこの分量を使用しないといけないと思います。上記の通り危険すぎてテストする意味を見出せないのでこれに関しては全く知見がありません。すみません。

      柔軟剤での濃染処理の場合、おっしゃる通り相当量の柔軟剤が必要です。
      市販の柔軟剤は香料がかなり強いためかなりにおいが残ってしまいます。
      私は業務用の無香性柔軟剤を業者さんから手に入れて、必要な場合に使用しています(普段は使用しませんが)。
      18Lが最小購買単位のため、通常の方にはお勧めできませんが。

      結果、田中直染料店さんのKCL-1のご使用が最も現実的と思います。
      これもおそらく陽イオン系界面活性剤なのだろうと思っていますが不明です。ですけど田中直染料店さんはしっかりとした検証のもと商品開発をされていますし、実際に多くの方が使用して濃い草木染めをされています。

      青木正明

      1. 迅速で丁寧なご回答ありがとうございます。とても参考になりました。

        確かにその量で致死量になるものを使って下処理するのは怖いですね。迷いがなくなりました、市販品を購入します!

        お忙しい中ありがとうございました。

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