tezomeya ブログ
紅花から紅を作る実験教室の報告
こちらも報告遅くなりましたが、
先週の土曜日に「手染メ屋の公開実験教室2009 その2」を開催いたしました。
今回は山形の紅花を使って口紅を作るワークショップ。
前回2月の公開実験教室は、店主がしゃべりすぎでちょっと中だるみが多かったので
今回は皆さんがずっと手を動かしていただけるようなイベントでやってみました。
紅を作る作業って、紅花を使った染色とその原理はほぼ一緒。大まかな工程の考え方も同じです。
この作業は酸とアルカリを駆使した内容でして、
アルカリで色素抽出、中和して染め、酸性にして固定・沈殿、
と、さながら理科の実験のような段取りが続きます。
ですので、今回はこの酸とアルカリに焦点を置いて、
公開実験教室のネタとして使ってみたんです。
もちろん、最大の目的は昔から日本で使われている天然の紅を
自分で作ること。総勢7名様に体験戴きました。
細かい工程の説明は省きますが、だいたいざっくり流れを言いますと、
①山形産紅餅(紅花の花弁を染料状態にしたもの)を水洗いする。
②アルカリ水に紅餅を入れて色を抽出。何度も揉みだして色素を溶かし出す。
③色素が溶け出たアルカリ水をクエン酸で中和して脱脂綿を染める。
④脱脂綿をしっかり水洗いして黄色色素を完全に洗い流す。
⑤激しいピンク色に染まった脱脂綿を再びアルカリ水に入れて赤色色素を抽出。
⑥脱脂綿を取り出し、液にクエン酸を入れて一気に酸性に。
⑦しばらく置くと沈殿物ができてくるので、絹糸とロウトを使って漉して色素のみを分離。
⑧器に塗って完成!
です。
結構フクザツっぽい工程ですが、要は、
紅花に入っている黄色色素と赤色色素から、赤色色素だけを取り出すための
作業なわけです。そのために酸やアルカリを使うんですよ。
もし詳しい説明がご入用な方は個別にお問合せ下さい【^^】。
で、最初にも言いましたが、以外に大変な作業が⑦の
沈殿した色素を布で漉して集める仕事。
これ、事前に段取りを検討しているときでも最も苦労したところです。
コーヒー用の紙フィルターだと紙の中に色素が沈着しすぎて
ちゃんと取れないし、布フィルターだと全部通しちゃうし、
市販の色々な布を使うとやっぱり全部通しちゃう・・。
で、困り果てていつもお世話になっている白生地屋さんの三浦清さんに
相談しにいきました。
由緒正しい絹地屋さんに、着物用にではなく
漉し布用の生地を探してもらうという甚だ失礼な相談にも関わらず、
いつものようにとても親切にご対応頂きました。
で、三浦清さんが出してきてくださったのが厚手の塩瀬。
これが、もう、バッチリだったんですよ。
この生地が手に入らなかったら今回のイベントは出来なかったかもです。
三浦清さん、本当にありがとうございましたm(__)m。
で、その塩瀬のおかげで皆様にも色素を漉しとって頂きました。
こんな感じ。
すごいですよね。真っ赤ですよね。
もう、この辺の作業になってきたら皆さんもかなりお友達同士になってきていて、
きゃあきゃあ言いながら作業してました。
この紅、乾くと、なんと緑色に見えるんですよ。
笹紅、って言うんですけど、なぜか赤ではなく光り輝く玉虫っぽい
黄緑色になります。
塗り方が下手で全然キレイじゃないですけど、ほら、確かに黄緑色に
光っているところがありますよね!
これが、なぜ、黄緑に見えるのかわからないんです・・・・。
この紅を作ってらっしゃるので有名な伊勢半さんという会社さんでは、
「赤の色素があまりに純度が高いために、赤の色を吸収してその補色である
黄緑色が見えてしまう」というご説明をされているのですが、
どうも、そうではないのではないか、と・・・。
詳しい説明をすることはココではやめておきますが、そもそも補色というのは
人間サイドの問題でして、僕らの目の都合なんですよね。
だから、いくら紅が赤の純度が高いからといって、それが補色を出す、というのは
ちょっと、え?って感じなんです。
でも、だからといって、そのメカニズムがわからない。
大学の先生にも相談をさせていただきながらいまだ現在調査中です。
このワークショップのなかでも、色と光の話をしながら「黄緑の怪」
としてメカニズムが不明のまま、僕の宿題とさせて頂きました。
どなたか、物理光学と色彩学などを専門にされている方でこの現象を
教えていただける方、いらっしゃいませんか?
もしご存知の方、推理をお持ちの方など、宜しくお願い致しますm(__)m。
・・・などと、後半他力本願な内容になってしまいました。
でも、とにかくキレイな赤と黄緑なんですよね。
現物はこの画像よりずっとずっとキレイですよ。
この紅作り、とっても楽しかったので当工房の体験教室の
レギュラーコースにしようかとも思っています。
体験教室でいつでも出来るようになったらまたサイト上でお知らせいたします。
その際は是非是非また体験しに遊びにいらしてくださいませ。
その前に「黄緑の怪」を解かないと・・・。
さて、次回の染めワークショップは
「伝統色のワークショップ2009 その3」 ~貝紫染め
です。
日付は5月23日。貝から色素を取り出すところからやるイベントにします!
詳細はまたお知らせいたします。
お楽しみに!
店主@手染メ屋
https://www.tezomeya.com/
緑色の原因は分かりましたか?
書き込みありがとうございます。
まだ確定的にはわからないのですが、「凝集すると反射特性の変わる粒子があるのですが、そういうものではないか」というお話をある大学の先生から伺いました。
ただ、やはりなぜ凝集すると色が変わるのかはわからないのですが・・・。
わかりましたらまたブログで紹介いたします!
とても興味深く読ませていただきました。
当方、趣味で紅花から紅を作ろうと模索しています。そこで伺いたいのですが、始めに使う紅花から何%ほどの紅が取れましたでしょうか?
また、アルカリ液を中性にするときの目安はどのように見極めているのでしょうか。詳しい作り方を知りたく書き込みをさせていただきました。
どうぞよろしくお願いいたします。
お返事遅くなってしまい申し訳ありません。
出来上がった紅のg数を計ったことが無いため、残念ながら収率は分かりません。
というのも、画像の通り小さな入れ物に薄く固めるだけでして、当方それほど精密な秤を持っておりませんので・・。
あの分量は山形産の紅花80g程度からとれる分量です。
ただ、書き込み頂いた頃(2009年)よりは現在の方がかなり収率よくなっています。今度計ってみようと思います。
また、中性にするためには、使用した炭酸カリウム分量を正確に記録しておいて、炭酸カリウムとクエン酸の中和反応式からクエン酸分量を算出しています。
ですので、天然の灰汁を使用する際は役に立ちません・・。
なお、目安としては、炭酸カリウムとクエン酸の中和の際に必ず二酸化炭素の泡が生じます。その出方が目安の一つになると思います。
あとは、液の味です。
ただ、このコーナーでお伝えするには少々話がややこしいです。もしご興味おありでしたら是非個別にお問合せ頂ければと思います。
当サイトのお問合せフォームからお待ちいたしております。
なお、その際ですが、紅を抽出する際にどの工程でお困りなのかなど具体的なお話を頂けますとこちらもお答えしやすいです。
「紅の採り方を教えてほしい」などのご質問ですと、どの程度詳しく文章でお答えするべきかわかりません(全てをメールのみでお伝えすることが大変むずかしいです)。
何卒宜しくお願い致します。
こんにちは。
紅を自作するため、作り方を参考にさせていただいております。
わかりやすい記事をありがとうございます。
『炭酸カリウムとクエン酸の中和反応式』について質問させていただきます。
中和式について色々と調べてみたものの、素人にはよくわからず、もう少し詳しくお答えいただけますと幸いです。
どういう風に調べると良いかや、式のフォーマットなど教えていただけますでしょうか?
お忙しいと思いますが、よろしくお願い申し上げます。
お問合せをいただきありがとうございます。
書き込み頂いたことに気づかず放置してしまっておりました・・。申し訳ありませんでした。お詫び申し上げます
「中和」については、サイトでいろいろと解説が転がっているとは思うのですが、こちらのページが簡単かな、と思いました。
https://katekyo.mynavi.jp/juken/7638
このページの「中和とは~混ぜ合わせて「中性」になるモデルケース」までをお読みいただければと思います。
なお、炭酸カリウムとクエン酸の中和式は、以下の通りです。
2C6H8O7+3K2CO3→2K3(C6H5O7)+3CO2+3H2O
※全角の数字はそのまま(すなわち分子の数)、半角の数字は小さい数字(すなわち原子の数)とお考え下さい