tezomeya ブログ
1Q84読んだ
garageの中西さんに借りて読んだ。
村上春樹の『1Q84』。
読むまでどんな話か知らなくて、
題名も“アイキューはちじゅうよん”
なんて間違って読んでて。
なんか知的障害者の子の話なのかな、
なんて大変失礼な独りよがりの想像をしてたんだけど。
いやいや、入り込んでしまいました。
2冊で計1000ページを超える長編を
こんなに一気に読んだのは久しぶりだ。
なんていうのかな、
あの、突き放した感プンプンの文体。
少ない言葉で表現する、って感じじゃ全然ないんだけど
わざとっぽく無味乾燥な、ニュートラルに言えば
客観的な、そして、時には人を食ったような比喩で
いろんなことをぐしゃっと、でも淡々とつづっていく、
あの独特な感じ。
これまで読んだ村上春樹の小説では、
一番ガッツリきました。
いえ、そんなに村上春樹好き、
ってわけじゃないんですけどね。
ノルウェイの森やねじ巻き鳥や他の短編いくつか
読んだ事あるけど正直全然頭に残ってないんです。
これまでで一番ガツンと来たのは訳本の
「心臓を貫かれて」。
でも、それよりもだいぶキた。
この、わけわかんないカルトSFファンタジーみたい
な話に例のシツレイな文体表現。よかったです。
この人、藤沢周平だとか山崎豊子だとか
多分絶対理解できない人なんだよな、と。
俗社会が建前でかかげる男性像だとか
教科書的な母親像とか、そういうものを一切無視。
で、アンチテーゼでもないんだよね。無視。
よくある、
「社会のうわっつらな道徳観をぶっこわすっ!」
的なパワフルなものとかも全然ないので、
拍子抜けするくらい力抜けてる。
で、その乾いた感じのまま摩訶不思議な話が
ごく当たり前に淡々と続くわけだ。
この空気感にやられました。
独特のドライブ感。
スガシカオと村上春樹って仲がいいらしい。
って何かで読んだ。
スガシカオが村上春樹をリスペクトしてて、
村上春樹がスガシカオの詞の感性に感心している、と。
今回、この1Q84を読んで
なんかそれってわかる感じがした。
ほら、スガシカオの歌詞って、オトコ版松任谷由実的な
とこあるじゃないすか。
オトコの恋心をオトコの目で写実的に淡々と語る口調。
一応ロックだから、村上春樹よりは起承転結の強弱は
付いてるしちゃんとオチがあったりするけど。
ナイショで付き合ってる女と別れる時に
「二人のために付き合ってたことは黙っておこうね」
とか、
街中の信号待ちで隣に停まった車の助手席に元カノが
乗ってるのを発見して「ココロがざわつい」て
声かけるか迷ってるうちに先に行かれちゃったりとか、
なんか、全然かっこよくないことを、スピリチュアルに
ではなくもちろんアンチテーゼでもなく、
「なんかこんなことありましたけどぉ・・」
的に、淡々と。
いや、それって恥ずかしくて言わないでしょ、ふつう。
ってなことも歌うわけですよね、彼は。
多分、ほっといたら自慰まで普通に唄にしそう。
村上春樹もスガシカオも、淡々と、写実的に、
ニュートラルに。
そういう口調で、
「いやいや、さすがにそんなことはないでしょう・・」
ってことを村上春樹が言い、
「あぁ、それありそうありそう、うんうん・・・」
ってことをスガシカオが言い。
どちらも乾燥具合がおなじかな、と。
アツくない具合がちょうど同じ頃合かな、と。
で、読みながら思ったんだけど、
「誰か映画化したいって言い出さないかな」と。
ほら、ノルウェイの森も今頃映画化されるし。
無理だよね。ムリムリ。
絶対やんないほうがいい。
読んだ人はわかると思うけど、
話の内容をそれなりに話に忠実に
現物の映像にすると、
エロSF映画になっちゃうよ。
この人の性描写ってすごい赤裸々じゃないすか。
今回だって
主役の女子は中年の頭が禿げたオトコを引っ掛けては
お盛んにはげしくエッチするし、
主役の男子が不倫の情事の後のピロートークするとき
はかならず相手の女が睾丸をもてあそんでるし、
未成年虐待的な性描写もあるし、
そうかといえば話の流れはパラレルワールド的だし
(もの凄くはしょって言ってますが)。
映像化しちゃった時点で全然雰囲気でないよね。
ノルウェイの森、その辺りどうするんだろ。
村上春樹原作の映画って「トニー滝谷」
しか見たことないけど、あれはよかった。
昔のブローニーで撮った写真みたいにコントラストも
輪郭もあまあまな柔らかい風合いの映像に、
単調な坂本龍一教授のピアノ。
で、イッセー尾形と宮沢りえの乾いたしばい。
すっごいキレイな、で、ありえない、
きわめて村上春樹な映画でした。
でも、この1Q84はそうはならないよね。そんな
“風合い”の要素をうまく作っただけではオブラート
できないドライブ感溢れるストーリーがあるから。
で、ストーリーを追うには、どうしてもエロSFに
ならざるを得ない。
むりだろうな・・・。
デビッド・リンチとかだったらできるんだろうか。
日本人じゃないけど。
そして、この小説さらに続編がでるそうですね。
4月頃に。
もう、ウレシハズカシです。
心境複雑です。
普通に考えたら、謎解きコーナーになっちゃいそうだし。
リトルピープルのこととか
くうきさなぎのこととか
なんで青豆がヤナーチェックを知ってたのかとか
ふかえりのドウタのこととか
元ネタの1984でおなじみのビッグブラザーの事とか
1984と1Q84のつながりだとか
・・・・・
いっぱいいっぱいあるなぞなぞの答え合わせに
なっちゃうのかな、と。
それはそれで嬉しいけど、なんか、知ったら最後、
この小説の妙にしっくり来てるザラツキ感が
さぁーっとひいて無くなっちゃうような。
かさぶたがやっと剥がれてつるんとしたうすぅい新皮
が顔を出したような、嬉しいけど寂しい終わりみたいな。
謎解きだったらまぁ面白いかもだけど、寂しいかも。
でも、謎解きな内容じゃなかったら「さすがぁ!」だけど
がっかりしちゃうかも(笑)。
まぁ、どっちにしても、楽しみだ。
出たら読もう。
直ぐ読もう。
・・・と、取り留めなく書いてしまった。
1Q84読んでないひとには何がなんだか
わからないかもです。すみません。
でも、ホント面白いですよ。
さすがベストセラー。
おすすめっす。
長いけどね。
このブログも長かったかっす。
すんまそん。
店主@手染メ屋
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