オーガニックコットンのこと

1.そもそもオーガニックコットンとは?


organicとは日本語で“有機的な”という意味です。そこから派生して、米国を中心に1960年代あたりから「有機栽培の」という表現に使われます。すなわち、農薬・化学肥料を一切使わずに有機栽培で育てられた綿花のみを原料にしたコットン素材がオーガニックコットンです。
もちろんオーガニックコットンと言われるにはもう少し具体的な決まりがあります。
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「農薬・化学肥料を概ね3年間使用していない土壌(畑)で、農薬・化学肥料を使用せずに栽培された、遺伝子組み換えではないコットンをオーガニックと呼ぶ」
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という、CODEX(食品業界の国際規格)が有機栽培作物の定義として使われている標準規格を、いくつかの団体がそのまま取り入れて「オーガニックコットンとは」の定義に使っています。
「オーガニック」というのは先ほどもお伝えした通り1960年代あたりから米国を中心に食べ物の世界で使われ始めたことで、衣類の世界は食品業界の追随をしている、という図式です。

合成された化学肥料や農薬を使わずに栽培されるこのオーガニックコットン、昨今の環境ブームで“地球に優しい”、“ヒトに優しい”、“サスティナブル”などと色々な冠がつく素材です。tezomeyaもこういった環境に考慮したモノづくりは開業時からずっと考え続けておりますが、最初にこのオーガニックコットンに目をつけたのは環境改善が本懐ではありません。『有機栽培』という“レッテル”をまとった素材独特の流通システムを好んで、なのです。

通常の工業用コットンは、彩りよく染色できる様に、もしくはできるだけ真っ白に見える様に、ソーピング、脱脂、そして漂白の作業が、原綿(げんめん、収穫されたワタ)から布に仕上がるまでの間に何回も行われます。これによって工業染色には不要な天然の臘(ろう)分やその他の不純物が除かれて行きます。
様々な工程を通ることで、不純物を削ぎ落としたセルロース純度の高い工業染色向きのスマートなコットンが出来、反応染料という合成染料で綺麗な色に染められたり漂白・蛍光染料をかけられて純白な白になってゆきます。

 

2.オーガニックコットンは手抜きの素材?


かたやオーガニックコットンは合成染料で染めて使うというケースが殆どありません。
『有機栽培』という冠がついている為、そのイメージに近い、出来るだけ自然のありのままの仕上がりにすることを生地メーカーもアパレルメーカーも考えます。すなわち染めずに生成(きなり、自然の綿花の色)のまま使うわけですから染色用のコットンのように執拗な洗い工程を通らないことが多いのです。

更に、「有機栽培で優しく育てられたのだからケミカルな薬剤は控えよう」といった心がけでメーカーさんが各工程に目をかけてくれることも多いようです。これは一見手をかけなくてラクができるようですが、実はその逆です。
今の工業用機械は載せる材料が均一化されていないとうまく動きません。それは糸や布を作る機械も一緒。しっかり油を抜かれたり、または逆に適度にワックスをかけられたり、きっちり漂白されたり、という工程を踏んだコットン素材の方が扱いやすいのです。

でも、そういう工程をあえて省くオーガニックコットンは機械にかけるのに少々手間がかかります。だから、この気遣いの度合いはメーカーさんや工場の考え方によって様々ですが、ナチュラル志向の高い生地屋さんが手がける場合はかなり「腫れ物に触る」ように扱ってくれている様です。

 

 

3.tezomeyaがオーガニックコットンを使う理由は?


この、『有機栽培』というレッテルが付いてるお蔭で生地になるまでほとんど加工されない、というのがミソなのです。
反応染料で染めるときは、しっかり洗浄して不純物が無くセルロース純度の高い綺麗な状態になったコットンの方が鮮やかに染まります。

一方、tezomeyaが使う天然染料は元々コットンを染めるのに不向きです。それは天然染料とセルロースの相性が悪いからなのです。
ナチュラルな自然のままのコットンについている不純物のほうが、主成分であるセルロースより染まりやすいくらいなのです。すなわち、草木染めでは不純物が多いコットンほど深く濃く染められやすい、という特徴があります。
そう、オーガニックコットン素材なら各工程の業者さんが気をつけて余計な加工をしなくて不純物が残っていることが多いので、草木染めには打って付けなのです!

※このあたりお話しにはちゃんと化学的背景がありますがここで長々と解説するのもなんですので今回は割愛いたします。
ご興味おありの方は是非お問い合わせください。

ここ、重要なポイントなのですが、オーガニックコットンは、
「農薬や化学肥料を使っていないから良く染まる」
のではありません。
「天然染料と相性の良い不純物がたくさん残っているから良く染まる」
ということなのです!

 

4.何でわざわざオリジナルのオーガニックコットンなの?


ただ、ひと口にオーガニックコットンといっても、その生地感はそれぞれだいぶ違います。
それは“生地になるまでどれだけ加工されずにきたか”によります。そして、その加工具合は全てメーカーさんの思想、考え方によって違います。
私たちは「コットンは不純物が残っているほうが染まる」ことに気づいたときに、街で売られているいくつかのオーガニックコットンアイテムを調べて染めてみました。
そして、世の中のオーガニックコットン衣類や生地は思ったよりもキレイめに、すなわちいろいろ加工を踏んで作られているということに気づきました。
そして、何の手も加えられていないコットン生地を手に入れるには結局自分で作るしかないということに考えが収まりました。

※tezomeyaが使うオーガニックコットン生地の出自は以下の通りです。
●綿花の生産地: アメリカ、インド、トルコ、エジプト、ペルー等
●紡績: 大正紡績さんが国内で紡績
●製編: カネキチ工業さん

大正紡績さんのオーガニックコットン糸をカネキチ工業さんに納入

カネキチ工業さんで編んでいただいく

tezomeyaに送っていただく

というシンプルな流れです。
「え、普通それだけなんじゃないの?」とお思いの方もいらっしゃるかとは思いますが、普通は違うのです。 先ず糸にする段階で幾つかキレイにするための工程があることが多いです。そして編んだ後も洗剤で洗いをかけて円柱状態の生地のまま熱をかけてヒートセット。ある程度生地を硬くしたら“胴切り”といって円柱状の生地をタテにずーっと切って一枚布にします。そして、糊抜き工程や洗い工程、そして漂白をしたりします。そこから生地の状態で染色です。そして染めた後に生地の巾や形を整えたり、縫製しやすいように生地にはさみを入れてもくるりと丸まらないように助剤に浸けたりして、一定の巾にしてヒートセットして出来上がり、というのが一般的な生地です。

本来、縫製業者さんや消費者さんのためを思って手を加えて下さっているこの様々な工程が、残念ながら草木染めの色目を入り難くしているのです。
tezomeyaでは、全く加工されていない、スッピンの生地を使いたい。その願いを100%かなえてくれたのが、私たちが使っているオリジナルのオーガニックコットン天竺素材なのです。
そして、再度言いますが、私たちがオーガニックコットンを使うのは、当初は純粋に草木の色を良く魅せたい、皆さまのお手元に届いてからも出来るだけ長持ちしてほしい、という願いから来ています。

もちろん、私たちの素材チョイスが環境保全やサスティナブルな生活のお役に少しでも立っているのなら、それは更にうれしい事です。
そのような小さな一助の為にもtezomeyaはオーガニック素材を使い続けます。

 

http://www.tezomeya.com

3 thoughts on “オーガニックコットンのこと”

  1. はじめまして土川と申します。
    私は木綿を手紡ぎして染めて織物をしていますが、「木綿の不純物があったほうが天然染料が入りやすい」という言葉が気になり、質問させていただきます。
    これまで木綿の糸を石けん水で精錬しないと脂分があって染料が入りにくいと思っていましたが、そうではないということなんでしょうか?
    それとも工業製品レベルの漂白などをしてしまうと染まりにくいが、家庭でできるレベルなら問題ないということでしょうか。

    1. 土川様
      お問合せをいただきありがとうございます。
      書き込み頂いたことに気づかず放置してしまっておりました・・。申し訳ありませんでした。お詫び申し上げます。

      ご質問に関しまして、お返事差し上げます。
      お話通り、コットンの脂分があると、水分が吸いにくいため、結果として染まりにくくなります。
      ですが、その脂分をがっつり取ろうとしてしっかり洗ってしまわれると、脂分だけでなく染料と相性の良い不純物たちも洗い流されてしまい、水はしっかり吸っても染まりにくい木綿になってしまいます。

      ですので、洗剤で洗う事にはメリットとデメリットがある、ということです。
      ですので、私の工房では石鹸や洗剤では洗わず、熱湯(6~70℃程度)を出し続けながら15分ほど洗濯機でTシャツなどを回します。
      そうすると、高温のために繊維状の油脂が柔らかくなるようで、水を吸い始めます。
      もちろん、それでも不純物は落ちてきますが、石鹸や洗剤を使うよりはましだと思っています。
      その後、脱水はせず、びちょびちょのまま、先媒染作業に移ります。

      ご質問の最後のところですが、問題ないかどうかは、土川様がご判断されれば、と思います。
      例えば、石鹸で洗った場合と、例えばでゅう性洗剤で洗った場合と、熱湯だけで頑張って(すなわち手間をかけて)もみくだして水を吸わせた場合とで、染色実験をされてみてはいかがでしょうか?
      そして、石鹸で洗った場合と熱湯で無理やり水を吸わせたものとでの染め色を比べて、土川様が「この程度の差なら問題ない」と思われるようでしたら、石鹸で洗うようにされれば、と思います。

      1. 返信ありがとうございます。
        私も質問したことを忘れていました(汗)
        そうですね、自分でいろいろと実験して比較してみたいと思います。

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