tezomeya ブログ

吊編み機の精度 ~“まぐれ”はまぐれから生まれない

吊編み機の精度 ~“まぐれ”はまぐれから生まれない

「ループ吊天竺」
昨年の秋冬から新たにデビューしてるtezomeyaの素材だ。
正確な言い方をすると
「表16番/裏20番 吊リバーシブル天竺(裏面少しループ出し)」
となる、長ったらしいニット。

店主の作業が遅く、結局サイト上でデビューはできていないが、この素材を使用したアイテムは、レディス、メンズとも昨年の11月から京都のショップでお目見えしてる。

和歌山のカネキチ工業さんで編んで貰っているニット。
この素材に限らず、tezomeyaのニット素材は全てここカネキチ工業さんの吊編み機で編んで頂いている。
編みさがってきた生機(きばた)をそのまま納品してもらい、京都を中心とした関西に点在する腕の良い縫い場で縫製して頂いて、服になる。
それを、ウチの工房で染めている、という算段だ。

この素材、ジャケットやパンツにしてもそれほど伸びすぎないようにしっかりと目を詰めてもらうが、重くならないように、出来るだけ軽く仕上がるように調整してもらっている。

しっかり目を詰めて、しかも軽く・・・。
そんな矛盾するような仕事を難なくこなして下さるのがこのカネキチ工業さん。
お相手して下さる岡谷専務も「相変わらずめんどくさいこと言うねぇ(笑)」といいながら、しっかりお仕事して下さる。
本当にいつもありがとうございます。

今回、この素材で春夏用のショートパンツを企画している。
履きやすく動きやすく、でもそれほど暑くないように。
そして、昨年の9月に編んで貰ったこの生地が秋冬の商品ですべてなくなってしまったので、春夏用に同じ生地を再度オーダーした。
それが2月の中旬に上がってきた。
先ほども言ったが、tezomeyaでは生地を生機のまま仕入れる。生機というのは、縮み防止や洗い加工が一切なされていない、ネイキッドな生地だ。
そのため、染色する際に縦横にものすごく縮んでしまう。もちろんそのことを考慮したパターン設計をしているわけだ。

だが、布は鉄板と違って毎回どうしてもその縮み具合が違ってくる。面倒くさいお願いをしている今回のような生地はなおさら、ロットごとにその挙動が変わる可能性がきわめて高い。
なので、新たに仕上がったロットの生機は、まず工房に生地を入れてもらってその目付(面積当たりの重さ)を計り、前回とどの程度違うかを確認する。
目付が大きく変わった場合は、新たに縮率を取るために試し染めしてパターン設計し直す。
これ、普通の服作りには無い工程です、ハイ。
ちなみになんでそんな面倒なことしてまで生機を使うのかはまた今度説明しますね。

今回も生地を1mほど先入れしてもらって目付を計った。

去年の9月のロットは生地縮率記録データをみると平米目付(生地1m四方あたりの重さ)が358.68gだった。
今回の生地は20cm四方で14.35g。ここから計算してみると、平米目付が・・・

358.75g!!

え?これ、生地だよね。鉄板とかじゃないよね?
すごくないですか!? なんとそのリピート目付精度が99.98%!!

この生地に関わらず他の生地でもこの作業はこれまでもやってるしカネキチさんは不安定なニット素材にもかかわらず毎回95%以上のすばらしい精度で上がってくるのだが、今回の数値には驚いた。
これ、鉄板でも無理じゃないかなこんな精度。

で、あんまりびっくりしたので、カネキチ工業の岡谷専務に興奮しながら電話して報告したら、

「あぁあぁそんなんまぐれやって。あんまり持ち上げんといて。次回が怖いわ、はっはっはっ♪」

との極めて淡白なお返事を頂いた。

そう、確かにまぐれだと思う。この微細な差は、おそらく当方の鋏の入れ方ひとつで変わってしまうレベルだ。
だが、まぐれは、カネキチ工業さんのお仕事だから生まれるのだ。
カネキチ工業さんのニットは、どんな生機の巾に上がってきても、Tシャツにして染色すると、ぴたぁっとすべて同じ幅に仕上がってくる。
これは10年以上やってきて身に染みて感じていることだが、こんな正確な生機を作るニッターさんを自分は知らない。

これは、おそらくとても高いレベルで作業を管理する体制が整っているからだ、と思う。
工場を何度も拝見しているが、スタッフのみなさんは常に整然と動き、そしてそれと共鳴していつも整然と編み機は動き続けている。
そういった正確な動作と工程から、確かな素材が生まれるのだ。
そして、そういった確度の高い仕上がりの中で、たまに、びっくりするくらいの精度のものが生まれる。
岡谷専務はそれを「まぐれ」とおっしゃったが、このレベルの「まぐれ」は、行き当たりばったりの作業からは絶対に生まれない。そう思う。

まぐれは、まぐれから生まれません。

今回は、そんな当たり前のことをまじまじと思った事件でした。
あぁでも数字見たときはほんとにびっくりした。

カネキチ工業さん、本当にいつもありがとうございます。
これからも末永く宜しくお願い致します。

精度の高いカネキチ工業さんのお仕事ぶりが動画で見ることができます。
ご興味ある方は是非どうぞ。

 

tezomeya

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です


reCaptcha の認証期間が終了しました。ページを再読み込みしてください。

Related Articles関連記事