tezomeya ブログ
日本茜(ニホンアカネ)の染色実験 プロローグ
どんなジャンルの仕事でもあると思うのだが、tezomeyaが従事している天然染料の染色にも、いわゆる『憧れの貴重な材料』というものがいくつか存在する。
その筆頭が、日本茜(ニホンアカネ)だ。
茜(アカネ)には、とっても大きく分けて三種類ある。
セイヨウアカネRubia tinctorum、tezomeyaが普段から使っているインドアカネRubia cordifolia L.、そして、ニホンアカネRubia akane Nakai。
ヨーロッパからアジアまで、色々な亜種も含めて各地で古来より使われてきた重要な染料植物だ。
セイヨウアカネとインドアカネは現在でも染料植物として栽培されており、染料店に行けば普通に簡単に手に入れられる材料だ。
対して日本茜が流通することはあまりない。理由は、セイヨウアカネやインドアカネに比べて色素量が少ないにもかかわらず、育てて収穫することに手間がかかる植物だからのだろうか。
だが、昔の日本にはもちろんセイヨウアカネもインドアカネも自生していなかった。すなわち、古代の日本の染めに使われた茜は全て色の出にくい日本茜を使って染めていた。
正倉院や法隆寺宝物館に今も残る、茜染めによる鮮やかな緋色は、舶来品でなければ全て日本茜で染められていたと考えてよいと思う。そして、その時代の茜染めを研究するには、どうしても日本茜が必要になる。
自分でも何度か採取しに行ったことがある。
これは3年ほど前にワークショップで訪れた岐阜県で偶然見つけて収穫した日本茜だ。
この小さな根を掘り出すのに、周りの土を払いのけてごっそりとるために20分ほど費やした記憶がある。
もちろん、こんな少量ではハンカチ一枚も染まらない。試験染めの分量にもならない。
著名な染色家さんなら、貴重な日本茜を手に入れる色々なルートがあるようだが、当方のようなぽっと出の無名の染め屋ではなかなかお目にかかることのできない染料、それが日本茜なのだ。
試してみたいことは数あれど、そもそも染料が手に入らないので、試そうにも試せない・・・、そんな悩ましい状況に甘んじながら15年が過ぎようとしていた2017年の暮れ。。
なんと、日本茜を栽培している方から分けて下さるという素晴らしくワンダフルでアンビリーバブルかつインクレディブルなお申し出を静岡の染色家、塚口さんから頂いた。
塚口さんのお隣の農家さんが、奇特にも日本茜を栽培しているとのこと。今回少量だけど何とか出荷できそうなのでもしよろしければ・・、と。
そんなん、もちろん頂きます頂きます頂きます頂きます!
たぶん、facebookのメッセでなんどもありがとうと頂きますを書いてお返事差し上げた。さぞ読みにくいメッセだったと思います。塚口さんすみませんでした。
そして、12月20日に待ちに待った生の2kgの日本茜がtezomeyaに届いた。
全然少量じゃないっすよ!
すごい量だ。。こんな量の日本茜の生の根をじかに見るのは初めて。
こんなにたくさん、ひげ根もきれいに収穫するって、大変だったろうな・・。静岡の富士見園さんに感謝感激雨あられだ。
この2kgを使って行った染色テストを、このブログに記録していこうと思う。染色にご興味ない方には何の役にも立たないかもしれないし、がっつり日本茜の染色をされている方には「そんなこと知ってるよ」という内容かもしれないが、まぁなんかの情報共有になればよいかとも思うし、何よりも、自分の備忘録の為に。
まずは、昔から試してみたかった生の根と乾燥根の染め比べテストを実施した。
次のブログではその報告から行います。しばしお待ちを。
teozmeya
https://www.tezomeya.com
すみませんが、これ、ちゃんとどこかで報告して欲しいです。文献として欲しいです。
ずっとわからなくて、困っていたのですが。
『延喜式』牛車は、大量に茜を使用してます。おそらく「糸毛車」という種類の屋根の部材だと思います。赤糸毛車を製作したかったものが、たぶん材料足りず、紫糸毛車が標準になったのかなと。
書き込みありがとうございます。
ただの染め屋のブログですので、現在のところ論文形式などでの機会もなければ考えもないのですが、本内容に関してはこれまでとは違いあまりふざけず客観性を重視しながら以降も書いていこうと思っていますので、もしよろしければご覧いただけましたら幸いです。
延喜式での牛車、調べたら2か所記述場所が出てきたのですが当方では牛車に関連しての茜の記述は見つけられませんでした。糸毛車の屋根の生地部に茜を使ったとのお話し、もしよろしければソースを教えていただけますか?是非調べてみたいです。
こんにちは、定年後農業をして13年目です。以前私の甫場でここは茜が沢山ある、これが茜ですよと聞いたことを思い出しながら草刈りをしている時、ふっと茜の染料はどんなものかと興味を持ち検索しました。多少でも貴兄の手助けになればと思いメールいたします。これも何かの縁です、よろしくお願いいたします。
住所 三重県津市美杉町太郎生池の平5989(旧美杉村です)
眞砂様
はじめまして。情報を下さり誠にありがとうございます!
お近くに日本茜がたくさんおありなのですね。素晴らしいです。
古いテキストをみても、古来茜は全国から取り寄せられていたので、 眞砂様のお近くも栽培もしくは野生のものがたくさんあったのかもしれませんね。
もし、栽培などをされるようでしたら是非是非教えてください!
興味深い情報をありがとうございます。
最近身近に茜が繁茂していることに気づいただけの素人なので恐縮ですが、もしよろしければ一つ御教授いただきたく存じます。
生の配糖体の状態では水溶性が高いとの事ですが、色素が減るのを防ぐためには、土を洗うのは収穫後しばらく置いて乾かすなどしてからの方が良いのでしょうか?
茜の存在を認識してすぐの時に掘り出してすぐ洗ったのですが、さほど根の方は色落ちした印象はないものの、水が僅かに赤紫に染まってしまいました。
この程度は許容されるのか、それとも正しい洗い方ではないのか、情報を探したのですが、洗い方はなかなか見つからない情報でしたので、もし差し支え無ければお教えいただけますと幸いです。
長谷川尚志 様
はじめまして。
こちらこそとても重要なご質問をいただきありがとうございます。
収穫したての泥付き根をどの程度洗うべきか、実は私もまだ悩み中です。
理論的には、おっしゃる通り全く洗わずに完全に乾いてから泥を落とすのが良いのでしょうけど、実際にその作業をすると、日本茜はひげ根の部分も多く、そこが乾いた泥と一緒に脱落してしまい収率が減ります。また、泥と一緒に焚きだすのは泥内に存在する様々な金属の影響が怖くてできません。
以前、
①全く洗わず完全に乾燥して、丁寧に泥を取った京都北部で採取の根
②適度に洗って泥を落としたうえで完全乾燥した徳島県西部で採取の根
では、②の方が濃かったです。もちろんこれは泥を取るべきか否かの直接比較実験ではない(個体が違うため)のですが、少なくとも、泥をどのように取るかよりも、個体差の方が色に大きな影響を与える、ということは言えそうです。
自分は、現在のところ軽く(数分)洗って泥を落としたのちに完全乾燥するようにしています。
また、実は最近の実験では、生根よりも乾燥根のほうが濃くなるという実験結果が出てしまいました。
このブログで言っていることが完全に正しいわけではなく、配糖体状態で存在するアグリコン量とは別に、ムンジスチンなど黄色素からプルプリンなどの赤色素に変身する量が乾燥時間・採取時期・個体差といった媒介要素により複雑に変化するのかな、と思っています。
このあたり、出来るだけ実験してゆきたいと思っています。
また何かわかればこちらで共有させていただきます!
収穫後の洗い方につき、情報、お考えを教えていただきありがとうございます。
染色をされる立場では悩ましい事かもしれませんが、未解明な要因がかなりありそうでとても面白いですね!
私の方ではこの4〜6月の除草の一環でちょくちょく収穫するので(大した規模にはならないかと存じますが)何かしらお試しにもし役立てそうでしたら、ご連絡いただけましたら検討しますので、宜しければご検討ください。
4月~6月の除草の際に株を採取されるとのこと、もしよろしければご相談に乗らせていただくかもしれません。ありがとうございます!
その際はまた改めましていただきましたメアドにご連絡させていただきます。
取り急ぎ、それでは失礼致します。
今後とも宜しくお願い致します。