メールマガジン
2015年6月その2
皆様
いつもお世話になっております。店主の青木です。
今月初めの三越本店さんの催事ではたくさんの方々に
お越しいただきました。本当にありがとうございました。
番頭共々この場をお借りしてお礼申し上げますm(__)m。
とうとう今年も梅雨到来ですね。
工房は例年通り一歩一歩着実にその居心地の悪さを増幅し続けております。
まだ、ええ、まだ大丈夫なのですが、来週や再来週になると、
コンロに火を点けるのに少しの勇気が必要になるのではないか、と・・。
皆様はいかがお過ごしでしょうか。
話は変わりますが、滋賀県信楽近郊の私設美術館「ミホミュージアム」に
先日行って参りました。
恥ずかしながら京都在住20年以上にも関わらず初の訪問でした。
目的はバーネット・ニューマン展だったのですが、それはそれとしまして
この美術館、噂にたがわずとても立派でございました。
そして、その立派さ加減というのが、やはり西洋の・・・
・・・と、続きは後に廻しまして、
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・・・・
建築家の香りが十二分に伺えるものでした。
このミホミュージアム、滋賀の山の中にございます。
辺境とまでは言わないまでも、アプローチが良いとはお世辞にも
言えないような立地です。
当方はトレーニングのために自転車で行ったのですが、
さすがに最後のダラダラとした山道は少々こたえました。
この建物の建築家さんはI.M.ペイという著名な中国系アメリカ建築家。
他にもジョンハンコックタワーやワシントンナショナルギャラリー
などの設計もされている方だそうで、その持ち味は自然との調和を
目指した建築だそうです。
山野の広大な土地を利用して自然をふんだんに取り入れるために
あえてこの土地にされたのだろうと想像できるようなその建築は・・、
陽光をたくさん取り入れた屋内、
広い空間を横方向に十二分に利用した威圧感の無い概観、
受付の建物から本館へと続く8分間のトンネルウォーク。
少し温かみのある明るいベージュを基調とした内装に質の良い調度品が
うるさくなく置かれ、落ち着いた品の良さがそこかしこに感じられました。
私設美術館って、ごてっとしてしまうことが少なからずあったり、
自分の身分はほっといてですが少し品がなかったりとか、
そういう感じを受けることが多いなか、スタッフの皆さんのそっと寄り添う
ような応対も含めてこのミホミュージアムは、そういう“アラ”を
一つも見つけることのできない、素晴らしい美術館でした。
そして、その「自然との同化」「自然との調和」というコンセプトの根源に、
やはり西洋的な“against the nature”な立ち位置を
感じずにはいられなかったのも、とても面白い体験でした。
例えば本館へと続くトンネルと橋の素晴らしいアーキテクチャー。
トンネルは優雅なカーブを描き、見事なシンメトリーにデザインされた橋を
渡るのですが、これは西洋の人たちの自然との同化の為の儀式なのでしょうか。
ここに、当方は勝手に「調和」ではなく「人間側の身勝手な征服感」を
感じずにはいられませんでした。
いや悪口を言っているのではありません。本当にその設えは
キレイだったのですから。ただ、極めて人間サイドから見た、
自然とのお付き合いの仕方、という風に当方には映りました。
例えば、本館からのスロープとアプローチに続く見事な景観。
全くゴテゴテなどしていません。緑に調和すべく考えられたであろう
モノトーンの立派な建物群が緑のなかにそこかしこ覗いています。
ですが、その建物群を見せようとしている時点でどうも人間側の都合の良い
景観の解釈があるような気がしました。
こんな仕事をしていると、「自然」とは何か、なんてことを
考える機会が時にございます。
こんなメルマガのマクラで長々とお話できる代物ではありませんし、
そもそも当方自体がちゃんと整理できていないので本当に上っ面なだけの
話で恐縮なのですが、西洋では『自然』とは恵の対象であるとともに
抗(あらが)う事の出来ない脅威でもありますよね。
で、恵んでいただけるときは感謝して恵んで戴く。脅威の対象となった時は
抗うだけ抗ってみる。で、無理なら逃げる。
最近では科学技術の発展のおかげで昔よりもほんの少しだけ抗える機会が
増えてきてますよね。で、抗えた時に「自然を征服したぁ!」っ
なるわけですよね。この時、その人間は間違いなく脅威とその主体となる
「自然」に対しては“対峙”してますよね。
でも、東洋の自然観って少し違いませんか?
私たち日本人や中国人やアジア全般の人たちも、同じように「自然」とは
恵みと脅威のどちらも与えてくれる主体なのですが、
自然が恵みを下さった時と脅威を与えた時に、
西洋ほどこちらの「自然」に対する気持ちって好対照には変わらない
ような気がしません?
西洋の人は
「こないだはこんなにやさしかったのに今日はなんでこんなにひどいんだ!」
と思うけど、東洋は、
「まぁ、神様の気まぐれだわなぁ…」って感じじゃないかなぁ、と思うのです。
なので、“自然”さんが機嫌よければその間にできるだけお恵み頂いて、
で、機嫌が悪くなってひどい事され始めたら逃げたりいなしたりして
治まるのをひたすら待つ、みたいな感じ。
特に自然に対して恨みなどしません。
もちろんそれで多くの人命が失われたりして人間側に不都合なことが起こると
悲しみますが、それで自然を上から何とかねじ伏せてみてやろうなんて気は
毛頭起きない。
私たち東洋人って、そんな感じなんじゃないかと勝手に思っています。
そんな私たちの感覚からは、あの建物はとても「自然との調和」とは
思えないな、と感じるのです。少なくとも当方はそうでした。
何度も申しますが、ミホミュージアムさんの建物が嫌いなわけでも
なんでもないです。
とても落ち着いた空間でしたし、素晴らしい展示をされていますし、
常設の品々もびっくりするようなものございますし、
また行きたいな、と思います。
ですが、あの設えを「自然と同化してますよね【^^】」と言われると、
うーん、と思ってしまうだけです。
たまたま楽しみに伺ったバーネットニューマンの作品自体も、
そんなことを考えずにはいられないようなものだったのもあって、
なんか、人とモノと自然とって・・・・、みたいなことをぼやぁっと
考えながらミホミュージアムさんで一日心地よく過ごさせて頂いたのでした。
ミホミュージアムさんに行かれたことのある方、いかがでしょうか?
・・・などとまた何のためにもならん独り言で失礼いたしました。
引き続き新作サイトアップできるよう頑張ります。
またイベントワークショップも画策中です。
夏本番に向けて手染メ屋ますます勢い精進致します。
今月も何卒よろしくお願い致します。
追伸その1
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追伸その2
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