tezomeya ブログ
カイガラムシから採る鮮やかな赤
伝統色のワークショップ2016 第一回
カイガラムシから採る鮮やかな赤
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本イベントは定員に達したため募集を締め切りました(2/25)
左がコチニール、右がラックカイガラムシです。染スカーフはコチニールの色です。
さて、今年初めての「伝統色のワークショップ」は虫を使ったイベントです。
普段何気なく口にしているスーパーに並ぶ様々な食材。その中に虫から採った赤色色素が使われているものが多いのはご存知でしょうか?
ソーセージ、明太子おにぎり、カニかまぼこ、かき氷シロップ・・・。そこに書かれている“コチニール色素”や“ラック色素”と書かれたモノは全て虫です。皆さん、実は普段から虫を食べてるんですよ。
コチニールやラックなどの“カイガラムシ”と言われる種類の虫はどれも少し紫寄りの鮮やかな赤い色素を体の中に持っています。そして、これらは昔から世界中で使われています。
南アジアでは広い範囲でラックが使われ続けていました。インドのサリー、インドネシアのイカットやバティック、中国からベトナムやタイにかけての少数民族の衣装。そこに色挿しされている暗めの赤色はこのラックでした。
我が国にも少なくとも奈良時代にはすでに日本にラックが持ち込まれています。正倉院宝物の薬物(あまり知られていませんが正倉院にはとてもたくさんの生薬が残されています)に「紫鉱(しこう)」と言う名前で納められています。この時代に既に染料として使用されていたかどうかは不明(おそらく使われていない)ですが、時代下って戦国時代には多くの武将がこの虫の赤を愛しました。それぞれの戦国大名が競って製作させた陣羽織。あの赤はほぼ全てコチニールもしくはケルメス(ヨーロッパのカイガラムシ)です。
正倉院に今も残っている紫鉱。吉岡幸雄著『日本の色辞典』より
小早川秀秋所用と伝わる「猩々緋羅紗地違い鎌模様陣羽織」。東京国立博物館HPより。
そして、西洋世界でも遥か昔からこのカイガラムシの赤は愛され続けていました。クリムゾン(crimzon)やカーマイン(carmine)の語源にもなったケルメス(kermes)というヨーロッパ原産のカイガラムシは新大陸発見まで大変貴重な赤色染料でした。そして中南米をわがものにしたスペインはインカやアステカで重用されていたコチニールと言うカイガラムシを得てヨーロッパに広めます(すなわちコチニールで儲けます)。
コチニールが手に入りだした中世から、赤は絵画や工芸品にも多用されます。レンブラントやフェルメールが使用した赤絵の具、そして有名な「貴婦人と一角獣」タペストリーの赤もおそらくカイガラムシではないかと言われています(時代的にこちらはケルメスもしくはラック)。
スカートにコチニール顔料が使われているレンブラントの作品。早川書房『完璧な赤』より。
・・・と、前振りが長いですが、今回はこのコチニールやラックを使って、世界中で愛され続ける虫の赤を染め出そう、というイベントです。染色はもちろん、今回は中世以降の絵画で多用されている「カーマインレッド」、すなわち“ムシの赤”の顔料も作ってみようと思います。
染色にはこちらで用意させて頂いた絹のストールを皆で染めます。出来れば媒染で色を変えて。もちろん仕上がったストールはその日にお持ち帰り頂きます。また、出来上がった顔料もご希望の方にお配りできると思います。
8名様にてお申込順で受付させていただきますm(__)m。
是非是非皆さんご参加下さいませ!